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末期がんの妻を看取る話だけど、悲壮感とか壮絶感とかはなくて
むしろ幸福感に包まれた。
人と人の距離感は、難しい。
それは対、人、だからなんだと思う。
犬だったらテリトリーに入ってきたら吠えてもうそれ以上は近づかないでと
意思表示できるけど、人はそうもいかない。
逆に、距離を縮めるのも難しい。
もっと近づきたいけど、迷惑じゃないだろうか、嫌われたらどうしよう、とか臆病になったり。
性格もあるのかもしれないが、大人になってしまってからは特に。
大人になって友達と呼べる人がなかなかできないのはそのせいかも。

いろいろ心に残るエピソードはあったが、一番は、美しく化粧された亡くなった妻の顔を見た夫の想い。
生きている時、あまり化粧はしなかった妻が死後化粧されて
(それはきれいなんだけれども)果たして喜んでいるんだろうか、という想い。
けれど葬儀屋の方のプロの仕事の骨折りに落としてくださいとも言い出せない。
お棺の中の妻の顔は夫が知っている顔ではないと違和感を持ちつつ、行われていく葬儀。
数年前、知っている方の通夜に参列し、最後のお別れをした時、私はびっくりした。
その方は癌の闘病をされていて、たぶん抗がん剤の影響なのだろうけど、髪の毛がないままだった。
お化粧もなし。これじゃ、あんまりじゃないかと思った。
その方はご近所さんで、自宅でカフェのようなかわいいお店をやってらして、私よりちょっと年上の綺麗な方だったのだ。
この本を読んでその光景を思い出した。
お化粧もなし、かつらも帽子もなし、それをご遺族はあえて選んだのかもしれない。
人がそれでどう感じようとも。
最後までちゃんと生きて戦ったんだなあと強い方だったんだなあという想いが今、こみ上げてくる。
なんであの時に、そう思って見送ってあげられなかったんだろう。
あの時の私の距離の取り方は美しくなかった、全然。

小説なんだけど、詩を読んでいるみたいな気にもなり
浮かんだ映像が架空のものと知っているのに、どこかに存在している
真実のような気になった。

本の最後の著者紹介に「誰にでもわかる言葉で誰にも書けない文章を書きたい」
とあった。
まさにこの本がそうじゃないのか?! って思った。
いつもは図書館を利用するのだが、この本は買おうと思う。
買ったら写経みたいに、書き写してみたい。
そしたらこの本と、本の中の人たちと、私との距離が縮まるかな。

平成29年2月7日読了

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# by soranosanngo | 2017-02-08 10:43 | Comments(0)