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詩「白菜白書」中国新聞詩壇賞

定期購読している中国新聞の読者文芸欄に、私の詩を載せていただいた。
事前に連絡があり、コメントと顔写真を送っておいたのだが、どきどき…。
あいにくの雨模様だったが、ビニールの包まれた新聞は濡れることなくきれいなまま。
配達する方のそんな気遣いに、いつにもまして感謝する、そんな朝だった。

詩壇賞に選んでいただいた詩。

「白菜白書」
丸ごとの白菜は
野菜というよりは赤子のよう
生きているずしりとした重量があり
まるで大切な預かり物のようにして
台所で抱きかかえれば
そこは冬の入り口だった

ひと皮 葉をむくごとに
そのからだは正しく小さくなる
まるで時間を巻き戻すような
まな板の上で執り行われる平凡な主婦の作業は
いっとき病気で失われた時があったからこそ
今はとても大切に思える

寄せ鍋に入れ
すき焼きに入れ
八宝菜にして
即席漬け
主人公になることはないものの
役をもらえれば
なんでだって挑戦します みたいな白菜

最後に愛らしい蕾になったものを解体すれば
わたしの小指ほどの一片の真実にたどりつく
 手持ちの時間は
 どれだけ残されているのだろう
生のまま食せば
それは苦い芯、であった

選者の野木京子さんより評をいただいたのも嬉しかった。
その中で「人は苦い芯にたどりつくために歩み続けているのか」という言葉にはっとする。
実は「苦い芯」の表現はフィクションなのである。実際の白菜の芯は無味だった。

今年、娘が学校で作ったという白菜をもうみっつももらった。どれも立派な白菜だった。
(重なると野菜室に入りきらないのが難)
いろいろ苦心しながら毎日のように食べている。
昨晩作った浅漬けに唐辛子を入れたのが意外に好評だった。私は30分くらい、ほんとにあさ~く漬けたものが昔から好きなのだ。
そのほとんどが水分なのに、あの好ましい歯触りに野菜の不思議さを想う。

いまだどんな詩を書いていけばいいのか、迷うことばかりなのだが、この詩が評価されたという事実に、これからの私の詩作について背中を押してもらったような気がする。
ありがとうございました。

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by soranosanngo | 2015-12-21 10:25 | | Comments(0)