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読書note詩集「死水晶」白島 真

まず表紙の絵から惹きつけられるものがあった。
空中に浮かんだ大きな目玉(のようなもの)、そして手をつないだ男女。
眼玉はタイトルの「死水晶」に重なる。男女は冒険の途で、今、不思議な輝くものと出会う。
そこは幻夢の神殿なのだろうか。
そんなストーリーがそこから語られているようだ。

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作者の白島さんとは現代詩フォーラムという詩の投稿サイトで知り合い、
とても文学性の高い詩を書かれる方だと以前から思っていた。
一篇の詩がその詩人の今日だとしたら、詩集というものは今日まで積み重ねた厚みのあるもので
読み終わった時、旅をした気分になった。
「死水晶」を巡る旅。
とても素敵な読書体験であった。

特に長編詩「肉体の創世記」に感銘を受けた。
 
 五日目に
 生まれたまばりの鳥が
 意味の彼方へと
 羽搏いていった
 その地平が僕の心象風景〈死〉である
 と気づいたとき
 近しい死への
 ふかい距離を垣間見た
 ぼくという主語は消され
 仮構の小舟は廃船と化した(「肉体の創世記」より一部抜粋)

生と死の近さを感じ、またそれらはめぐるものではないかと思う。

 半ズボンが草野球している地平から
 少年の日の合鍵が見つかったとしても
 ぼくは そっと仕舞いこむだけだろう
 埃だらけの状差しに

 幾千台もの機織り機が
 ぼくの血を織っていってしまうので
 ああ 空はこんなにも重いのです(「失恋」より一部抜粋)

失恋の痛みをこんな風にリリカルにうたわれると、失恋することもそう悪くはないことなのかも
と思えてしまう。

そうそう、ペンネームのからくりも面白かった。
「し」が三回も入っているのは、それが詩であり死でもあるのかな? ふと思う。

とても素晴らしい詩集をありがとうございました。





by soranosanngo | 2017-03-21 12:38 | 読書ノート | Comments(0)