カテゴリ:詩( 70 )

ふりあおげば
小さな雨があって
ほほえみながら泣いている
人のようだった
桜を散らすのは誰
誰でもない
そこにあるのは
過ぎていくだけの時間とカモミールティ
摘んだのは誰
わたしの手だ

ふりあおげば
おかえりと
その涙に似た水が
光を宿し
ほほえむようにぶつかってくるのです

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by soranosanngo | 2017-04-15 09:58 | | Comments(0)

詩「花時計」

はなびらがひとつほころぶたびに
時が刻まれて
そうしてこの小高い丘に
時があふれかえっている

頂まで続く低い階段は優しくて
いつかわたしたちは
数えるのを忘れていた

たくさん雨が降る日は
ここは勢いにまかせた激しい川になり
なにもかも流してしまったことだろう

けれど今
ふたたび小さな花を宿している
路々に顔を出したすみれにによく似た紫の花
戯れながら着地するモンキチョウ

残るものもあったのだ
やってくるものもあったのだ

いつのまに娘はわたしの背丈を超え
空に近いぶん
まぶしい

太い幹から芽吹いた蕾が
今という時の愛おしさでふくらんでいる
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by soranosanngo | 2017-04-10 08:35 | | Comments(0)

詩「春、うにこおる」

一角獣の角が
春のひざしで
次々に目覚めてゆき
そこかしこから
黄色い
小さな花を産む

ぬるい突風に
やわらかく
その身をあずけるたびに
けものだった昨日が
はがれおちて

うすあおい空は
さかさまの海
今という
小舟を漕ぎだすには
あつらえたみたいに
ちょうどいい


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by soranosanngo | 2017-04-03 14:07 | | Comments(0)

詩「みづぎわ」

冷たい水に
爪先をひたす
波はどこから来るのだろうとおもう
その波さえ触れれば逃げて
つかまえられないというのに

ブルーヘブンと書かれた頁を風が
めくる
それを
天国と訳そうか
それとも
青空と訳そうか
いずれにしても
そこでは
わたしは息をすることからも
解放された
ましろな鳥だった

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by soranosanngo | 2017-03-02 11:01 | | Comments(0)

詩「カード式記憶装置」

桜の前で人々は
デジカメやケータイのシャッターを切るのに忙しい
かくして
ひとひらに
宿る
いのちの姿は
小さなSDカードに
吸い込まれていった

いつまでも
変色しない
美しい
二次元の想い出が
そこに閉じ込められる

春の嵐で散りゆく
いくひらに
宿る
いのちの姿に
裏や表があることなど
想いをはせることもなく
忙しい毎日を
今日も
カードに記録していく私

 良寛さんの辞世の句「裏を見せ表を見せて散る紅葉」というのがあるのだけど、紅葉の裏表はわかる気がするが、桜のはなびらの裏表は樹をいったん離れてしまったらわからなさそう。
 人の裏は見えにくい(見えないように)ものだけど、もしかしたら裏にこそ人間味があるような気もする。
  
さよならと笑顔で手をふった人が数秒後真顔に変わるその瞬間を見る
みたいな短歌があって(もう作者も実際のうたもちゃんと覚えていない)それは「裏」と呼ぶにはそれほどの裏でもないけれど、人に見られる前提の「表」の顔とはやはり違うのかな、と。
 そういうものが短歌や詩や小説に描かれてると、カードに記録しないでも心に残る。
 でもまあ、生きてると、知らなきゃよかったという場合も多々あったりして。自分の裏、というのも含めて。


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by soranosanngo | 2017-02-26 13:00 | | Comments(0)

詩「にこごり」

冬の雨の日は
ちょうどいい具合の
にこごりが出来る
琥珀にとじこめられたものが
美しくみえるのは
ドライアイがいやされたからだろうか
時間がとまっているからだろうか

冬の雨の日は
悪いお天気だとみながいう
にこごりを待つ者にとっては
いいお天気なのに



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by soranosanngo | 2017-02-05 10:33 | | Comments(0)

tongue詩

 みみ

キミがみみをすこしかたむける
かわいいとだれもがいうけれど
あれは
獲物の音をきいている
みみは
野生をわすれない

 ふち

カップのふちを
マラソンする小人
いつまでたってもゴールがないという
ふちから落ちてしまえば
楽なのに

 らっきょう

びんのふたを
ぎゅっとしめたはずなのに
におってしまう
らっきょう こわい

 残雪

人に踏まれないままの雪は
きれいなまま逝くのね


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by soranosanngo | 2017-01-30 08:15 | | Comments(2)

詩「古い本を読む」

古い本をひもとけば
としつきという時間がほのかに匂う
薄茶色に変色した紙の
ところどころにシミがちらばり
水分が抜け落ち
乾いた手触りがする
閉じ紐はよじれながらばらけ
背表紙は心なしか色あせている

ああ
あなたはもう古い本になってしまった
わたしも古い人になってしまった
けれど
あなたの魂は
変わることなく
あの頃のまま文字として在る
わたしの魂は
変わりましたか?


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by soranosanngo | 2017-01-13 09:00 | | Comments(0)

詩「水仙の庭」

水仙の花は
いつでも突然現れて
いつのまにかいなくなるので
水仙の咲く庭は
さみしい

かぐわしいあの香りを
吸い込めば
いよいよ私の胸は
さみしさで
満たされてしまう

春なんか
こなければいい


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by soranosanngo | 2016-12-22 08:29 | | Comments(0)

透明の花束をかかえて
歩く人の影が
長く長く
のびてゆく
夕暮れの
もの哀しさよ

墜落して
土に還ったはずの
小鳥の羽が
舞っている

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by soranosanngo | 2016-12-09 08:34 | | Comments(0)