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春眠

冬眠から醒めたばかりだというのに
眠くて仕方がない

まるで満たされない腹を抱えて
食べるしかない
餓鬼のように
むさぼるように眠る
きっとそれが満たされることは
生きている限りないのだと思う

それとは底だ

底が見えないということは
ひどく怖しいはずなのに
不可解なことに
眠っている時のわたしは
ほほえんでいるらしい

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 ↑桜が散ってから毎年咲き出す庭のスノーフレーク。
 その形状や筆先で色付けしたような緑だとか、絶妙に可愛くて、
 神様の仕事ってこういうことなんじゃないかって思ってしまう。


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by soranosanngo | 2015-04-26 12:14 | | Comments(0)

引越し

マンションの12階に住んでたころ
風の強い日は玄関のドアが鋼鉄のように重くなる
誰かが外側からまるで開けさせまいと押しているのではないだろうか、と
真面目に怖くなったりもした
風というものは案外狂気をはらんでいる
じべたから遠く離れれば離れるほど
その怖さは増すというような
方程式が存在するとしたら
青い空に放たれた赤い風船を思い出すたびに
胸がざわざわとするのは正しい感情なのかもしれない
あの時の空の色はほんとうに
切れそうなほどの青だった

エレベーターはあったものの
地下の駐車場までいくつかの階段をクリアしなければならなかった
こじゃれた雰囲気の三段だけとかもあって
ベビーカーを押している身にとっては
なぜスロープにしないんだ!? と
そのたび舌打ちしたものだった

おまけに排気ガスでいつも澱んだ空気に満ちた立体駐車場で
ああ、ここはカラダに悪い、と罵りながら
自分の車に乗るまで
ボタンだとかキイだとか
煩雑な手間と時間がかかって
人間はこうやってひきこもってゆくんだなあとか
すべてがおっくうになりかけていた

引っ越したばかりの街で
唯一知っている人、だんなの帰りは相変わらず遅い
アンパンマンは台詞を覚えてしまうほど
三歳の息子と一緒に見倒した

そんな時、無くしてしまったと思っていた
生後5ヶ月の娘の
黄色い小さな靴下の片方を見つけることができた
おそらく誰かの優しい手によって
駐車場の操作盤にそっと置かれていたのだ
ささいなことが
日常を復活させることがある

ドアを開けなければ
それを拾うこともなかったという事実

私はあやうくひきこもりから脱出した
(気がした)

そのマンションは南海高野線の線路脇に建っていて
終点は高野山だと聞いていたが
高野山に一度も行かないまま
誰かにありがとうと告げることもないまま
私たちは再び引越した

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by soranosanngo | 2015-04-15 14:06 | | Comments(0)

「しずく」西加奈子

「ランドセル」「灰皿」「木蓮」「影」「しずく」「シャワーキャップ」6篇から成る短編集。

 どれも日常のあれこれを描きながら、きゅっと胸が切なくなるようなお話。あっというような仕掛けや驚きのようなものはなく、いや、ないからこそのリアリティがあると思った。

 一番好きなのは「木蓮」。主人公の正直な腹黒さ(といってもかわいいのだが)がとてもかわいい。誰かに(それが恋人であればなおさら)好かれたいと思えば、ちょっと無理してしまうのには私も心当たりがある。けれどそれを積み重ねていると、いつか限界が来る。いいひとぶっていても、実はそんな人じゃないのとカミングアウトしてしまいたくなる。(わかる、わかるー)
 恋人の子ども(離婚して元妻に引き取られている子)を訳あって、一日預かることになってしまった主人公。
 『獲物を取り逃がしたうみねこのような、苦々しい顔をしている』子ども。ただでさえ子どもが嫌いな主人公にとって、その子の子どもらしさ(相手の気持ちなんか考えない、思ったことはみんな言ってしまう、素直な残酷さ)は、ムカつくばかり。

 だけど、主人公は思い当たる。かつて自分も子どもだったのだ。非力で、弱く、大人が思う以上にいろんなことを考えていたってことを。

 木蓮は好きな花のひとつ。遠くからでも、あっ木蓮だとわかる、素朴で飾り気のない、それでいて存在感のある花のあり方がいい。樹になる果実のようだ。

 表題にもなっている「しずく」は2匹の猫目線がとても自然で、かわいく、悲しい場面でないのになぜか涙が出てしまうような切なさがある。
「のおおおお」「だふうううう」二匹は何かとけんかして殴り合う。そうして水道の蛇口のしずくを直接なめるのだ。二匹は別れてしまってからも、そうやって相手のことを想い出すのだろう。

 すべりおちようとしている水の一瞬が小さな私を映すよ、しずく

 西加奈子さんの小説は数冊読んだけど、これが一番好きかもしれない。2015.4月、読了。
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by soranosanngo | 2015-04-09 14:25 | 読書ノート | Comments(0)