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詩「常春」

たとえばどんな辺境にいようとも
つながってしまうダイヤルがある

現実は
いつだってそこからは遥か遠い地だ

マニキュアを塗る
刷毛の先から
凍えた粒子のせいで
すばやく固まってしまう、
そんな部屋に
ひからびてしまって
それでも
かろうじて生きている
へその緒を手にすれば
緒の先が伸びていく
その先で
黒電話の受話器から
若いままの母の声が
少しくぐもって聴こえてくる
きゅうくつなことが
安心だった
まだわたしが卵だったころ

水はいつだってちょうどよくぬるんでいて
そこは
自分自身との境界さえない春でした

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by soranosanngo | 2017-04-19 09:11 | Comments(0)

春は
気紛れなふりこのように
行ったり来たり
けれど
春の寒さで
心底凍えることがないから
うすいストール一枚くらいで
しのげたりする

黒いフエルト製の
ベレー帽を
この冬じゅうかぶりつづけたため
くたびれて
ほだされて
馴染んでしまった
もうひとつの
わたしの頭のよう

そんなようにして
人は季節ごと自分の分身をこしらえてゆく

うっかり春に不時着した
わたしの頭は
ひと冬分の思い出で
少しふくらんでいる

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by soranosanngo | 2017-04-17 12:16 | Comments(0)

ふりあおげば
小さな雨があって
ほほえみながら泣いている
人のようだった
桜を散らすのは誰
誰でもない
そこにあるのは
過ぎていくだけの時間とカモミールティ
摘んだのは誰
わたしの手だ

ふりあおげば
おかえりと
その涙に似た水が
光を宿し
ほほえむようにぶつかってくるのです

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by soranosanngo | 2017-04-15 09:58 | | Comments(0)

詩「花時計」

はなびらがひとつほころぶたびに
時が刻まれて
そうしてこの小高い丘に
時があふれかえっている

頂まで続く低い階段は優しくて
いつかわたしたちは
数えるのを忘れていた

たくさん雨が降る日は
ここは勢いにまかせた激しい川になり
なにもかも流してしまったことだろう

けれど今
ふたたび小さな花を宿している
路々に顔を出したすみれにによく似た紫の花
戯れながら着地するモンキチョウ

残るものもあったのだ
やってくるものもあったのだ

いつのまに娘はわたしの背丈を超え
空に近いぶん
まぶしい

太い幹から芽吹いた蕾が
今という時の愛おしさでふくらんでいる
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by soranosanngo | 2017-04-10 08:35 | | Comments(0)

詩「春、うにこおる」

一角獣の角が
春のひざしで
次々に目覚めてゆき
そこかしこから
黄色い
小さな花を産む

ぬるい突風に
やわらかく
その身をあずけるたびに
けものだった昨日が
はがれおちて

うすあおい空は
さかさまの海
今という
小舟を漕ぎだすには
あつらえたみたいに
ちょうどいい


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by soranosanngo | 2017-04-03 14:07 | | Comments(0)