ミシン
2011年 10月 25日彼女は室生犀星原作のドラマ「火の魚」で、病気になってしまう編集者の役で出演していたが
その時も、うまいなあと思った。
「カーネーション」に古めかしい骨董品みたいに美しいミシンが出てくる。
私が小さい頃、家にあったミシンにどこか似ている。流線型のボディに、手回しの車、糸などを入れておく引き出しの下には鉄の踏み板がついていた。踏み板を踏むとベルトで連動している車が動くのだ。
今と違ってそれはひとつの家具のようなどっしりとした存在感があった。
母はそのミシンで私や弟が小さい頃着る服を作ってくれた。
ハイビスカスの模様の(今思い出してもド派手!)夏のワンピースは一番のお気に入りだった。隣に住む従姉妹もおそろいで着ていたっけ。
採寸をし、(採寸しても大体において出来上がりは大きかった。すぐに大きくなる子供にワンシーズンだけの洋服とならないよう、母親の経済的な知恵だったのだろう)
デザインを決めたら、型紙を取り(それはデパートなどの包装紙であることが多かった)裁断する。
このとき使用するハサミは布裁ち専用であって、これで紙を切ろうものなら、「布が切れなくなる!」とえらく怒られた。
糸切り専用のかわいいハサミや指抜き、チャコペンシルごちゃごちゃとした、裁縫道具の中を見るのはとても楽しかった。
そういえば、ボタン専用の引き出しがあって、色とりどりのボタンが所狭しと入っていたが、それでおはじきをして遊んだものだった。あのボタン達は、洋服を捨てる時、ボタンを取っておいたものだったに違いない。
白い光沢の貝ボタンはお姫さま、モスグリーンのつやつやした大玉の飾りボタンは女王さま、ピカピカ光る金色のボタンは王様、お気に入りのボタンを種類ごとに集めては並べるのも楽しかったっけ。
痛い思い出としては、ミシンの針を手のひらに突き刺してしまったこと。幸い、3歳頃だったので、記憶にないのだけど。
怖くて、今となっては笑えるのが、火事にまつわる思い出。道路を挟んで向かいの家が火事になった時母は一人で重たく大きなミシンを家から運んだ。幸い類焼はまぬがれ、朝になり家の横にあった蜜柑畑の中にぽつんとミシンが一人佇んでいた。まるで一人でここまで逃げてきたようで、私はくすりと笑った。
現在、我が家にもミシンはあるがコンパクトで片手でも持ち上げられるほどの軽さ。ほぼ今はクローゼットの片隅で眠っている。
子供が小さい時はそれで幼稚園の通園バックやらを縫ったものだ。よく見るとアラがいっぱいなのだが、それは今でも現役で小学校の体操服や上履きなどを運んでくれている。
余談だが、嶽本野ばらさんの短篇集「ミシン」は純粋で切ない。好きな作品。そういえばミシンの仕事も切ないくらいに純粋だなあ。
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凪 ちひろ
at 2012-01-30 00:33
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初めまして。珊瑚様の詩に魅かれ、現代詩の方から辿って参りました。
俳句をやっていらっしゃるからでしょうか、
言葉の切り方が小気味よく、美しく、すっすと胸に沁みてきて、
ぐいぐい引き込まれます。
ここに来たのは初めてですが、これからもちょいちょいお邪魔させてください。
火の魚のドラマはわたしも見ました。
折見が何とも言えず魅力的で、素敵だなぁと思ったのですが、
カーネーションの主人公がその人だということに
恥ずかしながら全く気付いておりませんでした。
何か素敵な発見をした気分で嬉しいです。
わたしも布用のはさみを紙につかって注意されましたが、
布が切れなくなるというのは分かっていませんでした。
ちゃんと理由があるんですね。
(一人暮らしを始めてからは、お構いなしに普通のはさみでどちらも切ってしまっています……)
初めてなのに長文失礼いたしましたm(_ _)m
俳句をやっていらっしゃるからでしょうか、
言葉の切り方が小気味よく、美しく、すっすと胸に沁みてきて、
ぐいぐい引き込まれます。
ここに来たのは初めてですが、これからもちょいちょいお邪魔させてください。
火の魚のドラマはわたしも見ました。
折見が何とも言えず魅力的で、素敵だなぁと思ったのですが、
カーネーションの主人公がその人だということに
恥ずかしながら全く気付いておりませんでした。
何か素敵な発見をした気分で嬉しいです。
わたしも布用のはさみを紙につかって注意されましたが、
布が切れなくなるというのは分かっていませんでした。
ちゃんと理由があるんですね。
(一人暮らしを始めてからは、お構いなしに普通のはさみでどちらも切ってしまっています……)
初めてなのに長文失礼いたしましたm(_ _)m
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soranosanngo at 2012-01-30 08:57
凪 ちひろさま 初めまして!
そしてコメントありがとうございました。
とても嬉しく拝見いたしました。
「火の鳥」のドラマはとても素敵なドラマでした。
瀬戸内の島の風景も美しかったですよね。
またお時間のあるときに、いつでもお立ち寄りくださいませ♪
お待ちしています。
そしてコメントありがとうございました。
とても嬉しく拝見いたしました。
「火の鳥」のドラマはとても素敵なドラマでした。
瀬戸内の島の風景も美しかったですよね。
またお時間のあるときに、いつでもお立ち寄りくださいませ♪
お待ちしています。
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土屋怜
at 2012-03-22 08:54
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soranosanngo at 2012-03-22 15:15
by soranosanngo
| 2011-10-25 09:25
| 珊瑚の気まま日記
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Comments(4)