ミセス M

昨晩
ひとつの恋を失った
ミセス ミスティは
男の不実を責めるでもなく
ピアノの蓋を閉めた

ミとファ
シとドの間に
黒鍵がない理由は
おそらく
その間に
幻想があるからだと
彼女は言う

泣いてなんかいないわ

翌朝
彼女の霧で満たされた旧市街の
あちらこちらに
注意深くこしらえた
さりげなさをまとって
甘い黒鍵が落ちていたが
  
 夫婦の幻想、春の幻想、指輪の幻想、若さの幻想……

言い換えれば
おとぎばなしのたぐい
旅人が出立する頃には
ゆるみ
それらはみな
野良猫が食べてしまっていたので
現実という石畳だけが
おひさまに照らされていた

とてもすがすがしく


まったくこの街の猫ときたら そりゃあもうまるまると太っているのよ



※詩人サークル「群青」2014年1月のお題「霧」への提出作品
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Commented by poka at 2014-03-03 09:28 x
霧の課題 ありがとうございます。

幻想的  でもちょっと憎めない貴婦人のような雰囲気のある詩です。
この詩のバックに、ロートレックの絵と銀パリのシャンソン流したいで鵜。
Commented by soranosanngo at 2014-03-06 09:19
pokaさん、コメントありがとうございます。

いいですね! パリにいるような雰囲気になりますね!
Commented at 2014-05-14 20:42 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2014-05-15 20:22 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2014-05-16 06:57 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by soranosanngo | 2014-02-05 20:12 | | Comments(5)