「風に立つライオン」ネタバレあります。

 ある日本の青年医師が、アフリカで医療に従事し、そこで出会う人々、日本の残してきた恋人などが織り成す物語。
 あえて、なぜ、危険な内戦が続く地で、彼は働くという道を選んだのだろう。
 日本に戻れば、もっと便利で安全で豊かな生活が保証されただろうに。

 人が自らの一生をかけて、選ぶその道は、もしかしたらその人の「器」によるところが大きいのではないだろうか。
 この映画の主人公はそういう意味で、とても大きく深くそして温かい器を持った人間なのだろうと思う。
 医療キャンプで、せっかく怪我が治っても、再び戦地へ赴く人々。手をつないで地雷原を歩かされる子ども達。死への恐怖をなくすために麻薬漬けにされた少年兵士。
 悲惨な現実の前に、彼はくじけることなく、いや、もしかしたらくじけそうになりながらも、最後までその志を曲げなかった。
 襲われて「撃て」と渡された銃を「僕は医者だ」と言って人殺しの道具の引き金を引かなかった。
 自分の命を守るために、それを打ってたとえ相手を殺してしまったとしても、誰も責めはしないだろうに。(この映画は、さだまさしの同名の曲を基に作られたそうで、その曲にはモデルになった実在の方がいるそうだ。エンドロールに取材協力としてそのお名前があったようなので、映画のこのシーンとは違い、現実には元気なのだろうと思う)

 彼の命はなくなっても、その遺志は確実に受け継がれていく。
 キャンプに作られた孤児院では、子ども達が「いただきます」と手を合わせて食事する。

 東日本大震災と思われる場所で、彼に「ミケ」と名付けられたかつて少年で、成人して医師となった黒人が、日本人の少年に手をさしのべる。

 感動する映画とひとくくりにすると、拒否反応を感じる人もいるかもしれない。けれどそういった押しつけがましいところはなく、見終わったあと、とても爽やかだった。主演の大沢たかおさんの笑顔によるものも大きいのかもしれないが、とても素直に惹きつけられる映画だった。

 ひどいことをする人間もいる。テロや戦争で命を落とす人がいる。
 けれどこんなふうにまさに「風に立つライオン」のように、素晴らしい生き方をする人もいる。
 もしかしたら彼の志は、風に乗り、あちらこちらで芽を出し、美しい花を咲かせているのかもしれない。春の大地に芽吹く花のように。
 風には国境などないのだから。
d0253237_14331294.jpg

2015.3.19.広島八丁座にて。


「No Country」そらの珊瑚

風が
やすやすと
国境を越えてやってくる

クリスマス寒波に
背中を丸めて帰りを急ぐ人の
ひとりに、ひとつ
用意された家路をたどれば
夜に沈んだ土地に
ぽつり、ぽつりと
灯りがともされれば
人がいとなむ家がそこにあることを知る

あのひとつ、ひとつが
国だったらいいのに
おしょうゆ、きらしちゃって、と
おとなりさんに
借りにゆく気軽さで
人も
国境を越えていければいいのに
(だけどそれが叶わぬことだと知ってしまった、
 人だからゆえ)

風が
渡り鳥を連れてくる
春になれば
彼らが自らの体温を使って
温めた卵から
命が生まれるだろう
その翼は
かるがると
国境を越えていく
[PR]
by soranosanngo | 2015-03-20 14:34 | シネマレビュー | Comments(0)