詩「酸っぱい蜜柑」

鳥がついばんだ蜜柑は甘いと父は言った

けれど私が好きなのは
目が覚めるような酸っぱい蜜柑
同じ樹であっても
陽がたっぷりと当たる場所と
そうでない場所があって
少ない光を懸命に取り込んだ
そんな蜜柑がなぜだか今でも好き

老いた父の蜜柑畑は山に還ってゆくのだろう
眼前に新幹線が行き交う風景
晴れた日の相模湾の青さを
みつめる少女が今もどこかにいる
そんな気がして
昨日買った蜜柑をひとつむく
皮のうすいそれはきっと
私が好きな酸っぱい蜜柑
理由なんかたぶんない
鳥が甘い蜜柑を好きということに
生きてゆくということに
理由なんかなくていいように

d0253237_814385.jpg

[PR]
by soranosanngo | 2015-12-09 08:14 | | Comments(0)