読書note「職業としての小説家」村上春樹

村上春樹のエッセイのような本で、どうして小説家となったのかとか、どうやって小説を書いているのかとか、その人となりが伝わってくるような本。

【僕が長年にわたっていちばん大切にしてきたのは「自分は何かしらの特別な力によって、小説を書くチャンスを与えられたのだ」という実直な認識です】(52ページより抜粋)
 人生において何かやりとげよう思ったら、自己の能力を肯定する、過大評価でなく、実直に、というのは、それを持ち続けるのは難しいことであろうけれど、とても大切なことかもしれない。
 「小説を書く力」を人によってはたとえば「歌うチャンス」とか「走るチャンス」に変えることだって出来るだろう。

他にもいろいろな文学賞に対する考えなど、普段ではあまり触れることのないバックヤードみたいなものも読めて興味深かった。村上春樹という人が賞に対して興味がないことはわかったが、いちファンとしてノーベル文学賞を受賞して、どんなスピーチをするのか、是非聞いてみたいところである。

人にとっても日常は、楽しいことばかりでなくもしかしたら辛いことのほうが多いかもしれない。
それが現実、だから。
けれどもいったん物語として読むとなると、そこに描かれた人生、決して楽しいだけではない物語はなぜ楽しいのだろうと、つねづね疑問に思っていた。架空の中にひとつの現実だから、ということを差し引いても。
同書の中に「書くことが楽しい」「今度は自分の小説の中でどんなキャラクターに会えるのだろうと思うとわくわくする」というようなことが書かれていて、ああ、そうかと思う。作者本人がいちばん楽しんでいるのだから、それを読む人がすべての人ではないにしろ、楽しいのは理にかなっている、と。
身銭を切って(こういういい回しが膝をたたきたくなるくらいのうまさ)書かれた小説、また読んでみたい。
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by soranosanngo | 2016-01-06 15:27 | 読書ノート | Comments(0)