詩「甘夏の季節に」

甘夏を手にとると
私はどこかにたちかえってゆく

かごいっぱいに
甘夏を収穫した父の
労働という名前の匂いは
熱を帯びたひなたの石のようだった
今、冬をむかえた石は
すっかり冷えてしまったけれど
甘夏を剥くたびに
私は
食べきれないほどの
酸っぱさの中にほのかな甘みのある
光の果実を前にして
よろこぶ少女にたちかえってゆく
実際に
今でもそれは
食べつくせないほど
実り続けている
この初夏の空のむこうに
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by soranosanngo | 2016-05-22 08:03 | | Comments(0)