読書note「鏡の背面」篠田節子・ネタばれあり

久しぶりに読んだ長編小説。面白くて534ページを三日で読んだ。
ミステリーなのだが、現代社会の問題(DVとか貧困とか)も背景にしていて
女性のシェルター組織を主軸にして物語は進む。

一人の毒婦による犯罪の数々があきらかにされていく。
若くなくなった自分にもう女としての価値はないと知るや、裕福な女にすりかわることを目論む。
女は若い時、劇団で女優をやっていて、その時の経験が役に立つ。
血縁もない別人にすり替わるなんて、普通の人には出来ないだろう。
だけど彼女は、鏡の部屋でどんな角度でもその女に見えるよう練習する。
(鏡は古来から、呪術的な意味あいもあったことを考えると、夜など鏡を見るのはちょっと怖い)
見た目だけでなく、しゃべり方はもちろん考え方も模倣する。
そういうことに関して、突出した才能があったのかもしれない。
ということは、まっとうな生き方を選んでいたら、ひとかどの女優にもなれたんじゃないかと思ってしまう。
徹底的に模倣を重ねながら月日が経っていく。
身近な人のほとんどが彼女のウソを見抜けないのだが、たったひとり盲目の老女だけは
だませなかった。
目の見える人は、視覚による情報で判断するのだが、その情報が断たれている老女にだけ
真実が見えていたという皮肉。

女にとってのその誤算が、結果的に女を追い詰めたのだろう、意外な結末へ。

あきらかにされた真実に、少なからず救いのようなものも感じつつ。
でもやっぱり無残に殺されてしまった人には、なんの救いもないと思ってしまう。





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by soranosanngo | 2018-11-26 19:58 | 読書ノート | Comments(0)